2019年、島根県西部の伝統芸能「石見神楽」が日本遺産に認定された。
Photos:佐々木哲平
地域に深く根ざしているこの素晴らしい伝統文化を、これからも大切に守り育てていきたい。
文化庁が認定する、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーが「日本遺産」です。
文化庁は、ストーリーを語る上で欠かすことのできない、魅力ある有形・無形の様々な文化財を総合的に活用する取組を支援しています。
島根県西部、石見(いわみ)地域一円に根付く神楽(かぐら)は、地域の伝統芸能でありながらも、時代の変化を受容し発展を続けてきた。
その厳かさと華やかさは、人の心を惹きつけて離さない。
神へささげる神楽を大切にしながら、現在は地域のイベントなどでも年間を通じて盛んに舞われ、週末になればどこからか神楽囃子(かぐらばやし)が聞こえてくる。
老若男女、観る者を魅了する石見地域の神楽。
それは古来より地域とともに歩み発展してきた、石見人が世界に誇る宝なのだ。
海に国境のない時代-中世。山陰地方の西端のまち益田は、その地理と地域資源を活かして、大きな輝きを放っていました。
人々は、中国や朝鮮半島に近い地理と、中国山地がもたらす材木や鉱物など地域資源を活かして、日本海交易を進めました。
領主益田氏は、自らも交易に積極的に関与し、優れた政治手腕を発揮して平和を実現しました。
経済的繁栄と政治的安定のもと、東アジアの影響も受け、どこにもない文化が花開きました。
現在の益田にはその歴史を物語る、港、城、館の遺跡と景観、寺院や神社、町並み、庭園、絵画、仏像などの一級品がまとまって残っています。
このように、時代と地域の特性を活かして輝いた益田は、中世日本の傑作と言え、全国でも希有な中世日本を味わうことのできるまちです。
地下へ続く階段を下りていくと、目の前にそびえ立つ幾本もの巨大な木―。
三瓶山の噴火で地中深くに埋まった縄文時代の木々が、悠久の時を超え、当時のままの姿を現しているのです。
火山大国である日本。
人々を脅かす噴火ですが、石見の国おおだには様々な恩恵をもたらてくれました。
かつて世界に「ジパング(日本)」の名をとどろかせた石見銀山の鉱床もマグマから生まれたのです。
そして火山が育んだ豊かな大地は生活を潤してくれました。
暮らしの根っこに火山の歴史が息づくまち、石見の国おおだ。ここには火の国のめぐみと出逢える旅が待っています。
幕末の津和野藩の風景等を記録した「津和野百景図」には、藩内の名所、自然、伝統芸能、風俗、人情などの絵画と解説が100枚描かれている。
明治以降、不断の努力によって町民は多くの開発から街を守るとともに、新しい時代の風潮に流されることなく古き良き伝統を継承してきた。
百景図に描かれた当時の様子と現在の様子を対比させつつ往時の息吹が体験できる稀有な城下町である。
日本海や瀬戸内海沿岸には、山を風景の一部に取り込む港町が点々とみられます。
そこには、港に通じる小路が随所に走り、通りには広大な商家や豪壮な船主屋敷が建っています。
また、社寺には奉納された船の絵馬や模型が残り、京など遠方に起源がある祭礼が行われ、節回しの似た民謡が唄われています。
これらの港町は、荒波を越え、動く総合商社として巨万の富を生み、各地に繁栄をもたらした北前船の寄港地・船主集落で、
時を重ねて彩られた異空間として今も人々を惹きつけてやみません。