Text and Photos:西村 愛
自然・伝統・美食に心癒される石見旅
次のお休みは”石見休暇”を取って、都会の喧騒から離れ、疲れた心と身体を優しく癒してくれる石見国の旅へ出かけませんか。
前日、温泉津に流れる穏やかな時間と石見神楽からもらったパワー。静と動の感性を揺さぶられ、抑揚感を未だ引きずりつつの三日目・最終日。石見の中でも食材の宝庫である益田市方面へ向かいます。
心地よい旅の疲れも感じながら、再び石見の西へと車を走らせます。
立ち寄りスポットとして加えやすい国道沿い。ひと際目を引くおしゃれな店舗が楓ジェラートです。
県内のフルーツや食材を使った数々のジェラートが常時8種~12種類。また年間を通しても50種類以上のジェラートを旬に合わせて展開している人気のお店。
益田市内にある「メイプル牧場」の牛乳を使った一番人気の牧場ミルクをベースとし、様々なフレーバーがあります。
この日は2種類のジェラートを選べるダブルでちょっと欲張りに。牧場ミルクと、創業130年以上の歴史あるお茶屋さん、島根県松江市の中村茶舗の抹茶を使ったジェラートをいただきます!
まずは牧場ミルクをひと口。
口どけの良さ、そして後に残るは牛乳そのものの味。こってりしたスイーツというよりも、甘くて冷たい牛乳を飲んでいるみたい。
抹茶の方はというと、大人の苦みがあってしっかり濃厚。渋味は旨味。これが意外とお子様にも人気があるのだとか。
そしてこちらはアフォガード。肝心のコーヒーにもこだわりがあり、益田市内の「栗栗珈琲」のコーヒー豆を使った自家製コーヒーゼリーと熱々のエスプレッソという2段使い。
濃いコーヒーとそれをまろやかにする牧場ミルクジェラートの見事な出会い。ツルンとしたコーヒーゼリーの食感がまた大人のエッセンスを加えています。
ぜひおすすめしたい一品です!
定番牧場ミルクはもちろん、フルーツでは益田興産ファームのいちご「紅ほっぺ」とクッキーを使ったサクサクいちごや、ブルーベリーは定番商品。ほかのフレーバーもナッツやチョコレートなどを使った魅力的なものばかりです。
店舗に勤めるスタッフみんなで試作を重ね、日々新しい味を生み出しているのだといいます。
島根の本物を知っているスタッフだからこそ、愛溢れる味を提供できるんですね。
夏、この辺りの川べりを走ると釣り人が糸を垂れている光景に出会うことがあります。川の恵みと共に生き、住まう人々の暮らしに出会える、季節限定、特別感ある光景です。
鮎の名店と方々から名高い、津和野町日原の美加登家。
元々は料理旅館でしたが、今では鮎やすっぽんなどの高津川で獲れる食材を使った料理を提供する専門店となっています。
東京新橋にある「鮎正」はこのお店の姉妹店です。
外観には石見の左官職人が描いた鏝絵も見ることができ、地域の「らしさ」を存分に感じられるお店です。
鮎のコースはゆるやかにスタートし、途中メインの焼き鮎を超えてからも鮎が続くフルコース。
「背越し」は季節限定、7月末くらいまで。その後は「洗い」となります。
夏の季節を感じる清涼感ある味わいの中にほんのりと甘さを感じます。
鮎の苦みを旨味に変えるのは焼きの技。比較的小ぶりな鮎を選びしっかり中まで火を通します。そうすることで頭から骨からすべてを丸ごと食べられます。これが簡単なことでなく、きちんと火が通らないと生臭さが残ってしまうし、強火だと表面が焦げてしまうのです
鮎は捨てるところがない。だから全部食べられるように焼いています、とお店の方はおっしゃいます。
夏のお椀はふたを開けた瞬間にふわっと香りが立つ「冬瓜と小鮎」。とろりとほぐれる冬瓜と香ばしい鮎との組み合わせ。
今のスタイルでの営業となり80余年。手間暇かけた料理を通して自然からの恵みを大切に扱う心をも伝えてくれるお店です。
石見の玄関口「萩・石見空港」から益田市内を抜け、1時間ほどのところにある渓谷「匹見峡」。
膨大な年月をかけ浸食されてできた渓谷で、川の美しさはもとより緑深い山道はドライブするのに最高です。
谷になった川沿いを車で走っているとその美しい水に目を奪われます。
運転手の皆様、わき見に気を付けて(笑)
エメラルドグリーンで宝石のような輝きの川面。蛇行する川は浅い深いを繰り返し、グリーンのグラデーションを作り出します。見つめているとその美しさに吸い込まれてしまいそう。
車から降りてエンジンを切ると人工的な音は一切聞こえず、川のせせらぎと風に揺れる葉の音、虫や鳥の声に包まれます。
大らかな自然に身を任せ、頭を空っぽにしてしばし体と心を預ける。
最適化したくなったらまたここへ来よう。
日本全国津々浦々色んな町を旅しますが、その中ではどうしても刺激や興奮がある「強いコンテンツ」が必要になることがあります。それは“わかりやすさ”が欲しいからであり、“伝わりやすい”からなのです。
それでは“わかりにくい町”とはいったいどういう町なのでしょう?
その地元独自の文化や歴史が介在していたり、その場所を楽しむために学ぶ必要があったり、情報があまり得られなかったりする町のことです。それらを言い換えるとその地域にしかない考え方や生き方がいまだ健在で、それらがとても奥深いということです。町の空気や家々や、なんてこともない風景を見た時に初めてわかるような、さりげないけれどじわじわと染み渡るような場所のことなのです。
石見はまさにそんな町です。
足を運ばないと実際に感じられないものなのです。本当に良い場所であることは伝えたいけれど、いくらどんな表現を使って文字をつなげても、この石見の空気感は伝えることができません。
これを読んだ皆さんには、日本全国色んな町にお出かけしてほしいから。
だからこそ、まずは石見に一度足を運んでほしいのです。
石見を知れば日本各地の地域がわかる。日本の縮図みたいな町、石見にぜひ一度お出かけください。